そのまま「走る」映画

もうすでにNAVERまとめに「走る映画特集」が投稿されてて、「やられた!」と思いましたが、記事を読んで「そうかな?」と思う作品が多数ありました。あと、カブったものもあるので、、、

 

走る」というアクションについて、作品の中でなぜその人は走らなければならないのか?どこに向かっていて、終わりがあるのか?等、考えることがたくさんありすぎます。単に監督が「主人公を走らせたいんだ!」という意図から話を組み立てていくのも、ものづくりとして魅力があります。走る1シーンを撮りたいがために作品を作ってもいいと思います。「セーラー服の女の子を激走させたい!」だけで個人的には、そんな作品観てみたいです。

単に登場人物が「走る」という個人的なカテゴリーの作品を紹介していきます。

 

 

ラン・ローラ・ラン』(1998年・ドイツ)

やっぱりこの作品がパッと出てきます。赤髪の女性が街を走り抜ける、、その画だけでグッとくるでしょう。「走る」というヴィジュアルで言うととてもシンプルで、81分という尺でサクッと観れます。「愛のために走る」がテーマだと思いますが、色んなレビューを見ると、「ローラが彼氏に振り回されてかわいそう」など、かなりマイナスな意見がちらほらあります。が、私はそう思いません。ローラの方がどう考えても一枚「うわて」で、助けを求める彼氏はどうしようもないダメ人間だと思います。そんな彼氏のために走り続けるローラはとても魅力的な女性に見えませんか?

 

 

 

裸のジャングル』(1966年・アメリカ)

逃げるは恥だが役に立つ」どころじゃなく、逃げないと死んじゃうよ!「ミイラ取りがミイラになる」そのもので、白人のハンター(象の狩猟)が原住民の怒りを買い、襲われます。仲間達は火あぶりにされ、そこから逃げ出した主人公の男を原住民が総動員で追ってきます。弓や槍が飛んできたり、動物に襲われる。炎天下の中、倒れてしまったならヘビが襲ってくる究極の状況で頼れるのは本能のみ。「野生を取り戻せ!

ちなみに2006年にメル・ギブソン監督で「アポカリプト」という映画がありますが。まさにこれと同じです。「裸のジャングル」は原住民という集団の種族レベルですが、「アポカリプト」は文明レベルで追ってきます。マヤ文明を描いたかなりの力作で、セリフも全てマヤ語です。この作品も確かに走る映画だと思いますが、なんといっても「人物」の描き方がとても素晴らしいと思います。実際にマヤ文明の人達に会ったこともないし、マヤの歴史の勉強もしたこともないです。ですが、その時代を生きていた人達はどんな気持ちで生きていたか?というかなりぼんやりとした想像をはるかに超える描き方で観た人を感動させてくれるでしょう。

※どちらもショッキングなシーンがあるのでご注意を。

 

 

幻の湖』(1982年・日本)

心の底から紹介したい作品、これぞ正真正銘の走る映画そのものかも。東宝創設50周年記念作品として、監督を橋本忍、製作には野村芳太郎、日本映画の集大成として制作された「幻の湖」。しかし、14日間で公開打ち切りになり、カルト的な作品となりました。なぜ大ゴケしたのか?まずこの映画のジャンルを言うとするするならば、「ラブロマンスSF時代劇スパイアクションサスペンス」。尺は164分、長っ。ちゃんぽん映画かつ、2時間半以上のダブルパンチを喰らえば席を立つお客さんの気持ちがわかります。

観終わった後にどんな映画?って聞かれると、腕を組んでうーんと首を傾げてしまいます。物語は現代から始まり、戦国時代、未来に渡って「琵琶湖」「一人の女性の意思」が描かれます。とにかく物語が壮大で、どこも妥協なく何もかも全て描き切ってます。ただ、そこがコケてしまった理由だと思います。東宝の記念作品なら予算もかなりあったでしょう、それに橋本忍が監督を務めるとなれば、誰も文句は言いません。誰の邪魔もされず橋本監督は自由にこの「幻の湖」を書き上げたに違いません。一人の女性を描くどころか風呂敷を広げすぎ、それが裏目に出てしまったのかもしれません。それでもラストの男を追うシーン、まさに走るシーンはかなり見ごたえがあるので、気になる人は鑑賞するのをおすすめします。